- 人文・思想
書籍名:「私でなくもない」―おそらくは演技の話
Outline書籍の概要
「妄想」を出発点に「妄想」が始まってしまう。哲学、脳科学、演劇、人類学……さまざまな領域の「妄想」的ななにかへとの思考は飛躍し、そこから新たな思考が生まれてゆく。跳ね回るかのような「妄想」的批評。 はじめに「妄想」とは「陥ってしまうもの」だと定義してみる。つまり、自分にはコントロールし得ないもの。
それでは「陥ってしまうもの」とは、他になにがあるだろう?……まずは「聴声」。これは自分の内言、つまり心の声にもかかわらず「誰かからの呼びかけ」のように聞こえてしまう現象。そして「憑依」。役者や預言者が、自分ではない存在を降ろし、自分ではない誰かのセリフを自分の口から語る有り様。すなわち、聴声も憑依も、人を「私ではないが、私でなくもない」状態。 これは決して、縁遠いものではない。
例えばファミレスで、嫌な客から理不尽に怒られる。そんなときは何も考えず自動的に謝罪し、裏に戻ってから愚痴を言う。そのとき、表で「謝っている自分」は、本心であるところの「愚痴っている自分」とは全く異なる態度となる。そして、その「謝っている自分」への切り替えはほとんど無意識的に行われ、その人格は本来の私とはまったくズレた態度をとっているにも関わらず、確かに私ではある。
まさしく「私ではないが、私でなくもない」──このような在り方を引きつつ「妄想」について語ってゆく。
「次世代の教科書」編集部/妄想講義シリーズ 第22巻
「面白くて役に立つ本を次世代へ」をコンセプトに、まだ世の中であまり知られていないけれど、面白くて重要な気づきを与えてくれる内容に光を当てる「次世代の教科書」編集部の新シリーズ。
今回は「妄想」をテーマに、明るい未来を作るための「考える力」を習慣にする講義シリーズです。「賃労働」「不妊治療」「SNS時代のコミュニケーション」「エアコンのない生活」など、テーマは多様で今もっとも新鮮でリアルな価値観やテーマを学ぶことができます。多様な執筆人が「妄想」を語り、読者に新しい未来の可能性を与えます。
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