書籍名:「私でなくもない」―おそらくは演技の話

「私でなくもない」―おそらくは演技の話

著者:渡辺健一郎

定価:500円(税込)

Outline書籍の概要


「妄想」を出発点に「妄想」が始まってしまう。哲学、脳科学、演劇、人類学……さまざまな領域の「妄想」的ななにかへとの思考は飛躍し、そこから新たな思考が生まれてゆく。跳ね回るかのような「妄想」的批評。 はじめに「妄想」とは「陥ってしまうもの」だと定義してみる。つまり、自分にはコントロールし得ないもの。

それでは「陥ってしまうもの」とは、他になにがあるだろう?……まずは「聴声」。これは自分の内言、つまり心の声にもかかわらず「誰かからの呼びかけ」のように聞こえてしまう現象。そして「憑依」。役者や預言者が、自分ではない存在を降ろし、自分ではない誰かのセリフを自分の口から語る有り様。すなわち、聴声も憑依も、人を「私ではないが、私でなくもない」状態。 これは決して、縁遠いものではない。

例えばファミレスで、嫌な客から理不尽に怒られる。そんなときは何も考えず自動的に謝罪し、裏に戻ってから愚痴を言う。そのとき、表で「謝っている自分」は、本心であるところの「愚痴っている自分」とは全く異なる態度となる。そして、その「謝っている自分」への切り替えはほとんど無意識的に行われ、その人格は本来の私とはまったくズレた態度をとっているにも関わらず、確かに私ではある。

まさしく「私ではないが、私でなくもない」──このような在り方を引きつつ「妄想」について語ってゆく。


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著者プロフィール

渡辺健一郎(わたなべ・けんいちろう)

1987年生、横浜市出身。早稲田大学大学院文学研究科表象・メディア論コース修了。演劇教育の現場への違和感と、哲学的な思索とを往還した評論、「演劇教育の時代」で第65回群像新人評論賞受賞。著書に『自由が上演される』(講談社、2022)。追手門学院大学非常勤講師(2023年度~)。2024年6月に第一子が誕生したため、現在の主な関心は「子育てと演技」。